国産キットと海外キットの2つの違いをざっくり説明いたします
 
国産キットは、キット製品として非常に優秀で、パーツの精密さとマニュアルの充実度は世界に他に例がないほどで、お客様は、プラ模型の感覚で組み立てが可能です。
海外のキットは、巷で、セミスクラッチといわれるとおり、日本人のキット観とフルスクラッチ(完全な自己製作)との間の製品で、自分で工夫を凝らしたい職人さんタイプの方に向いています。海外キットの利点としては、ハードウッドを採用していることまで考え合わせると安いこと(コロナ時のインフレで、以前より高くなりましたが)、また非常に多種類のキットがある点をあげることができると思います。また、自分で考えたり製作したりする機会が多く、概してキット設計も独特のアバウトさから「改造」への受容度が高く、将来自分でフルスクラッチも楽しめるようになる可能性が高いことなどがあげられます。(国産派の方が海外キットへ移行するときは、いったん海外製のビギナー向けのものから、入る方が無難かと思います。カラーが異なるため、大きなストレスを感じる可能性があります。)

このような国産キットと海外製キットの違いは、言語の上からも確認できるように思えます。
英語のアートという言葉はクラフトを含んでいます。実際の話、海外の私どもの同業者はアートディレクターを名乗っている方も少なくありません。アートですから、正確なパーツをマニュアルに従って取り付けるだけで終わらないのは当たり前だし、自分の好みで作り変えるのも当たり前、というアプローチです。(もちろん国産も海外製も模型ですから海事学や博物学にもとづいて、完成した時の正確さも当然求めていますし、最近の設計のものは、日本製のようにパーツや組み立て方が正確厳密になってきていて改造の受容度が低いです。)
マニュアルやパーツリストもよく見ると、工業製品のようにキットの中にどんなサイズで何本の木が入っていると詳細に書いているものは少なく、むしろどのパーツが、どんな材質で作られ、どんなサイズであるかを、詳細に書き連ねているものが多い傾向にあります。


 海外キットでは欠品が多いという噂もありますが、国産よりは多いかもしれませんが、大量にあるというわけでは決してありません。日本市場は世界で一番品質に厳しい市場なので(輸入業界での常識)、メーカーとは、かなり何度も昔からお願いをしており、現在、パーツは、どのメーカーでも2回チェックしている言っています。また、国産でもパーツ不足がないわけではありません。
 過去の実績から言えば、全体の3割前後の欠品報告は、海外メーカーは告知なしに仕様を変更することから、仕様変更に気づかず消費してしまっていたり、木取りという概念がなかったりしているため等の様々な理由から、実際は存在していながら、欠品と判断してしまったケースとなっています。
  また、どのメーカーも指摘していますが、時間が経過している場合、お客様が、意図的に紛失を防止する方法を採用していない限り、作業中になくす可能性が、お客様が思っておられるより、遥かに高いそうです。

迷った時の現実的な選択として海外製の帆船模型でも、アマティ、ビクトリーモデル、アークレー、アルテサニア、ヴァンガードモデルなどは、日本人のキット観に近いアプローチの製品なので、最初はこのメーカーの中から選ぶとよいと思います。
コーレル、ジョティカ、マスターコラベル、マモリ、マンチュア等の他ブランドは、非常に魅力あふれる製品ですが、パーツをほんとに職人が製作していたりするなど、実力派カスタマー向けの製品が多いように感じます。
(コーレルのランタンなどは、ガラスに真鍮を組み込んでいたりしていて、こだわりが見て取れます。当店の精密滑車はマスターコラベル製です。マスターコラベルのセールは、展示会で出品されているベテランのセールに遜色ありません。ジョティカも、他メーカーでは省略しているような箇所まで再現していたりするメーカーだと言われていたりしています。)


 次に、海外製の帆船模型の趣味が、あまりメジャーになれない理由、言い換えれば独特の難しさもご案内しておきたいと思います。
 日本に輸入されるようになって、すでに何十年にもなりますが、なかなか普及しない大きな原因は、文化ギャップ、情報の少なさ、製作の難しさ、製品のアバウトさにあるのではないかと思います。これから始められる方にとって、これらが支障になりうると思いますので、ここを具体的に説明させていただきたいと思います。

 まず、最も大きいのは帆船に関する情報の少なさではないかと思っております。海外では、帆船の本や帆船の模型製作の本が、かなり発行されています。海外の方は、市販の本を購入したりして、気軽に情報を得ることが容易です。
しかし、日本においては、西洋式帆船を使用していた時代が、きわめて短いため、その知識や情報に触れることが非常に少ないうえ、日本では、帆船の本も帆船模型の製作の本はほとんど無く、これから始めようとする方にとっては、模型の製作方法を知るだけでも簡単ではありません。


 また、日本では「模型」とか、「キット」と冠すると「ミリ以下の単位で正確に作られたパーツがそろっていて、それらをマニュアルどおりに組み立ててできる」というプラモデルの延長としてとらえられる傾向にあると思います。
 ところが海外製の製品は、多かれ少なかれ、マニュアルどおりにパーツを組み立てれば完成するという形式になっているものはなく、前述した理由からか、主体性を活かせるようなあいまいさを確保したセットになっています。本来なら、この工業製品としては未完成的な部分を、自分でカスタマイズしたり工夫したり、趣味人として博物学や海事学の本をつまみぐいしたりして、クラフトマンシップを追求していく高度な趣味のはずなのですが、帆船に関する基礎的な情報の不足という点によって、なかなか、そこまで到達しないことが多いのではないかと感じています。
 実際、工作を始めるとわかるのですが、基本的には「木」ですからパーツを作ったり改造したりするのは、思っているより、ずっと簡単です。大きなモノを作っているわけではありませんから、そう力がいるわけでもなく、簡単に削ったり、切ったりすることが可能ですし、また失敗しても、材料費がたくさんかかるわけではありませんし、誤って接着しても木製ボンドは水性ですから、水に濡らしたりすれば、取り外してやりなおしが効くことからもそう難しくないはずなのです。そうやって自分に納得いくものを製作していく楽しみが実現していくのですが、一定以上のレベルになると西洋式帆船自体や帆船模型製作の情報が不足が楽しみを減じてくるようになるのではないかと思います。

 また逆に、洋書で調べ尽くすというような堅苦しい模型製作、日本人特有の求道的な固定観念も楽しさを狭めてしまうことがあります。
(昔の帆船の正確な姿という点に限れば、一定の理解が進むと、実は、わからないということが結構あるのです。推測の域であることが、意外に多いのです。学説が変わったら、作品は、どうなるのでしょうか・・・たとえば、日本でいえば、桶狭間の戦いを知らない人はいないと思いますが、桶狭間がどこか?どのように戦かわれたか?、実は未だ学説上の問題になっています。)
  
 ですから些事にこだわって製作の楽しさを減じるより、帆船や模型の持つ独特の機能美を、自分の工夫で表現することと理解し製作するというスタイルで入門し、その後、幾つかキットを組み立てる中で技術と情報を蓄積したり、資料を広く集めたり、展示会に行かれたり、友人と情報交換したりして、じっくり腰をすえて、より精巧なものへ進めていく過程自体を楽しむそんなものであることを望み、店の方針としております。


2024年2月


※金属パーツの部品不足や不良については、補充に日数がかる場合がありますので、できるだけ商品受領時にご確認ください。
 確認作業は、どんな部品が使われているかを知り製作のイメージを培う効果もありまして、海外の入門書の中でも、このような作業が、たいてい推奨されています。
(部品数が非常に多いので、紛失しないよう、できるだけケースから出さない等して点検することを推奨しています。また、部品の照合ですが、たしかに、すべてをパーツリストと照合するのが理想的ですが、図面や完成写真から、どの部品がいくつ必要かをわり出し照合し、異常があったときだけパーツリストと照合する現実的な方法もよくおこなわれているようです。また、ベテランの方の中には、パーツを実際に使用するまで、紛失予防のため、ほぼ開封しないという方もおられるとお聞きしています。)

※ 国産キット、輸入キットの長短を認識したうえでご選定下さい。基本的には、神経質な方はご遠慮ください。
輸入キットは、アークレー、ビクトリーモデル、ヴァンガードモデル等、昔と比べると工業製品化してきているものも増えましたし、
店では、できる範囲で最大のフォローを行っておりますが、最後は、自己責任とならざるえませんので。

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